ドラマ
ああ定年Ⅰ
三月十日、本日をもって…
[CX]
1979年3月10日(土)22:00~22:55
人事部次長で定年を迎える小林桂樹が社長、滝沢修の家を訪ねてきり出す――「社長の私に対する評価をおききしたい。社長にとって会社にとって、私は有能な社員だったのでしょうか?」。小林の表現する〝サラリーマンの悲哀〟だ。彼は社長派と目され、重役になると期待されていたのに、不況の会社が百人の希望退職をつのる時にぶつかったため、昇進できなかったのだ。滝沢が答える――「君は優秀な部下だったよ。直系の君を抜てきするには時が許さなかったんだ」。サラリーマンはそんなひと言で自分自身を納得できるものなのかもしれない。何ともはかない存在ではある。小林の会社では折しも定年延長が役員会のテーマになっている。小林は強い反対の空気に逆らって「社員が老後のことにまで気をつかうなら、会社のために全力を出しきれないのではないか」と主張し、社長から感謝される。それが彼の最後の〝仕事〟であった。夫の心を理解してヘソクリを差し出す妻、渡辺美佐子に向かって「職安に通って、ゆっくり自分に合った仕事を探すよ」と小林は最後にタンタンと語る。
【脚本】布勢博一(日脚連)
【出演】小林桂樹、高橋昌也、片平なぎさ、渡辺美佐子、梶芽衣子
【製作著作】テレパック
【ディレクター】脇田時三